耳鼻咽喉科 アレルギー科 清水おかべクリニック 平成16年10月1日開設
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清水おかべクリニック
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舌下減感作の可能性
2005年春、スギ花粉症フィーバーで多くの方が辛い思いをされたのも、記憶に新しい所です。
改めて「花粉症って、根本的に治せないの?」と思われた方も多いでしょう。

現存する花粉症の根本治療としては、前述の「減感作療法」があります。
約90年前から行われているこの治療法は、高い効果が報告されている物の、皮下注射を連続して行わねばならないという点がネックとなり、日本では治療法の主流とはなっていません。注射だから当然痛い。週に2回も病院に通わないといけない。治療が進めば通院の頻度が減るとはいえ、2年位は通院を続けた方が良い訳ですが、現実にはなかなか難しく、途中で治療を断念してしまうケースもあるようです。
また頻度は少ないものの、アレルギー反応を起こす物質を注射する訳ですから、副作用が生じることもあります。蕁麻疹や喘息症状、重い場合はアナフィラキシーショックが生じる事もあるとあって、この治療に踏み切れない方もいらっしゃるようです。

こうした従来の減感作治療の改良版として期待され、現在研究が進んでいるのが
舌下減感作療法(SubLingual ImmunoTherapy、略称SLIT スリット)です。

従来の減感作が「皮下注射による抗原投与」を行っていたのに対し、この方法では「舌下(舌の前方下)での粘膜吸収を利用した抗原投与」を行うので、このような名前で呼ばれています。最近テレビ等で紹介された事もあり、注目を集めています。

人間の体は、常に病原微生物、アレルゲン、体内の常在細菌といった様々な外部異種抗原にさらされています。そしてこれらとの接触の場の主役となっているのが、鼻・のどから始まる呼吸器・消化器系臓器の表面にある
「 粘膜 」です。
この粘膜が、単に外部に対するバリアーとして働いているだけでなく、適応・獲得免疫誘導の場として重要な役割を担っている事が近年わかってきました。粘膜面から吸収された抗原は、汎共通粘膜免疫誘導システム(Common Mucosal Immune System、CMIS)を介して免疫担当細胞を活性化させます。その結果、粘膜面での免疫応答が惹き起こされます。一方で免疫担当細胞は、脾臓などの全身系免疫担当組織にも刺激を伝え、全身性の免疫応答も惹き起こします。
従って、粘膜からの抗原の効果的な投与は、粘膜系と全身系の二重の防御免疫を活性化させる事が出来ます。これを利用した花粉症の治療法がSLITなのです。

SLITは現在研究段階であり、実施法が確定した訳ではありませんが、日本医科大などで試験中の方法は以下のような物です。
舌の前方下の口腔底にパンの小片を置き、そこに抗原であるスギ花粉のエキスを滴下し含ませます。パンを使うのは、花粉エキスが流れてしまうのを防ぐためだそうです。その状態で2分間保持することで、粘膜からエキスを体に吸収させます。あとはそのパンの小片を飲み込んでしまい、1日1回の投与は終了します。
最初の3週間は毎日1回これを行い、花粉エキスの量・濃度を徐々に増やして行きます。4週目からは週に2〜1回、更に2〜3週間に1回の投与と、少しずつ投与間隔を広げて行きます。これを2年間続けます。早い人では投与開始3週間程で治療効果が出てくる人もいるという事です。
他に、スギ花粉のエキスを含んだ口中錠の研究を進めている所もあるようです。

現在謳われているSLITの特徴をまとめると、以下のようになるでしょう。

 高い治療効果が見込める
SLITはまだ研究段階の物ですが、「薬物療法よりも高い効果を示した」「従来の減感作療法と比べても同等かそれ以上の効果があった」という報告が多くなされています。
これまで有効とされてきた皮下注射での減感作が、主に全身免疫応答に対してのみ働いていたのに対し、SLITでは粘膜系と全身系の二重の防御免疫を活性化させられる可能性があり、その分高い効果が期待できます。
また、口内の粘膜はヒスタミンを分泌する肥満細胞が少ないので、アレルギーの症状が発現しにくい傾向にあります。その分、注射より濃度の高いスギ花粉エキスを投与しやすいのも、効果の高さ・効果発現の早さに貢献するのではと考えられています。
更に、舌下から抗原を吸収すると、頚部のリンパ節に抗原成分が届きやすくなります。スギ花粉症の症状は鼻や目といった顔での症状が主となる訳ですが、顔に近い頚部のリンパ節に作用しやすいSLITはその面でも高い効果が期待できるのでは、と考えている研究者もいます。

 副作用が少ない
SLITでの重篤な副作用の報告は今の所ほとんど無いようです。一番重い物でも蕁麻疹にとどまり、ショックにまで至ったという報告例は無いようです。この事がSLITの一番のメリットと考える研究者もいます。

 通院加療が楽
注射の痛みが無い、というのは馬鹿に出来ないメリットです。減感作治療は特に若い年代で行った場合に効果が高い事が知られていますから、子供でもさほど抵抗無く実施できそうなSLITはより広く受け入れられる可能性があります。
また、皮下注射であれば基本的に医療機関でしか実施できませんが、抗原エキスを服用するというSLITであれば自宅で実施可能です。(副作用が少ないというのも、自宅での加療を行いやすくしています) 医院への通院も軌道に乗れば月1回程度で済むとあって、患者さんにとって負担が少なくて済みます。

欧米ではSLITの評価が高まりつつあり、1998年には世界保健機関(WHO)が花粉症の治療法の1つとして本治療法を推奨しています。既に欧州では治療法として承認されてもいるようです。
日本でも1998年から臨床研究が開始され、現在日本医科大等の研究施設で臨床試験が行われている最中です。

ここまでの話だと、SLITは良い事ずくめの夢の治療法のように思われますが、まだまだ治療法や評価が確立されたとは言い切れません。研究者によっては、「劇的な効果は認めない」「即効性があるか否かはっきりしない」という報告例もあるようなのです。
今後の欧州での成果に関する報告や、国内での臨床試験の結果などから、本当に効果があるのかどうか、治療の細かい方法論についての検討がなされてゆくと思われます。それを我々は期待を込めて、しかし冷静に見守っていく必要があるでしょう。


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