耳鼻咽喉科 アレルギー科 清水おかべクリニック 平成16年10月1日開設
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清水おかべクリニック
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新型インフルエンザが流行したら
国際ニュースで、「鳥インフルエンザ」が取り沙汰されるようになって久しくなります。特に最近は毎日のようにこの話題を耳にします。
このウィルスの毒性の強さはかなりの物のようですが、昨年までは鳥から人への感染はごく限られた場合のみに留まっているようでした。
しかし、今年は東南アジアでの鳥インフルエンザの流行に歯止めがかかる気配がありません。鳥から人への感染例も数多く報告されて来ており、既に死者も60人以上出ているようです。これまでアジアに留まっていたこのウィルスのヨーロッパへの拡大も起きています。今後冬にかけて渡り鳥が移動するようになるので、更なるウィルスの拡大が懸念されています。
世界保健機関(WHO)はこのほど、「人の間での新型インフルエンザ大流行が起きる」と明言しました。いつとは言えないものの、鳥インフルエンザの大発生が続く東南アジアのいずれかの地を起源として、人から人に感染するよう変異した鳥インフルエンザが出現する可能性が高い、と。
もしこの新型ウィルスが登場し、パンデミー(世界的大流行)が起こった場合、世界中で30億人がこのウィルスに罹患し、うち5億人が死亡する、という予測がなされています。日本の厚生労働省も、このような事態に至った場合日本でも16万人以上が死亡する、と試算しています。
本当にパンデミーが起きるかどうか、「神のみぞ知る」といった所ですが、実際にこのような事態に至った場合にどのような問題点が出てくるのか、ちょっと考えてみました。


まず、診断の問題が出てくるでしょう。ある人に風邪様の症状が出た場合に、果たしてそれが新型インフルエンザによる物かどうか、鑑別はつくのでしょうか。
鳥インフルエンザウィルス(H5N1)は、人間に罹患するインフルエンザウィルスのソ連型(H1N1)や香港型(H3N2)とは型は異なるものの、いずれもA型インフルエンザウィルスに属します。それ故日常診療で用いられているA型インフルエンザウィルスの診断キットを使えば、陽性として検出されます(通常の人インフルエンザと同様、検出感度が100%ではありませんが)。しかしそれ以上の鑑別、従来型なのか新型なのかの区別はこの検査ではつきません。ウィルスの型の判別は、血液中の抗体反応・分離ウィルスの抗原解析等の更に詳しい検査を行う必要があり、即日で結果が出る事はありません。検査設備・医療費などの要素も含めて考えても、日常診察でこうした精査を行うのは難しいと言わざるを得ません。


治療に関してはどうでしょうか。
インフルエンザの治療に用いられている従来の抗インフルエンザウィルス薬は、鳥インフルエンザにも効果があるはず、と考えられています。しかし、実際の鳥インフルエンザの治療経験というのがあまり多くない為、効果の程ははっきりとは分かっていません。ともあれ、日本など先進主要国で薬の増産計画が持ち上がっているようです。しかし、もしパンデミーが起こった際には到底供給が追いつかなくなるであろうと予想されています。アメリカ政府などは早くも、感染拡大を最小限に抑える対策として抗ウィルス剤の在庫確保に動いているようです。ただ一方で、現在の抗ウィルス剤に抵抗性を持つインフルエンザウィルスもありますし、もし新型ウィルスがそうした薬剤耐性を身につけるような事があれば、かなり厳しい事態になる事が予想されます。


やはりインフルエンザで最も重要なのは予防策です。新型インフルエンザの予防は可能なのでしょうか。
現在使用されているインフルエンザワクチンは、WHOの推奨に基づいて、これまでに流行したAソ連型・A香港型・B型の3種に対して予防効果を持たせています。しかし、同じA型でも全く型の異なる鳥インフルエンザウィルスに対しては、予防効果はありません。
現在、世界中で新型インフルエンザウィルスに対するワクチンの研究・開発が行われています。ただ、ワクチンの量産・供給にはどんなに早くとも2〜3ヶ月はかかるので、パンデミー発生に間に合うかどうかが危ぶまれています。

現時点では、これぞ決定版と言えるような予防対策は残念ながら無いようです。
後は基本的な方針として、インフルエンザにかかった病鳥との不要な接触を避けるべきでしょう。鳥インフルエンザの流行地域に出かけなければならない時には、マスクを着用し、なるべく人混みを避け、うがい・手洗いを励行する、といった事が重要になると思います。


パンデミーなど起こらず、こうした懸念が無用の物になると良いのですが・・・。




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